
【スカっとする話】社長交代により経営悪化しリストラ。しかし救いの手が。
私はこの会社に勤め30年が経つ。
それなりに尽くし、又、活躍し、現在は重役にまで出世した。
この会社は中小企業でまだまだ弱小だが、成長の芽は充分に期待できる。
それも尊敬出来る、この社長のお陰だろう。
ある時、社長が高齢の為、その座を息子に譲ることとなった。
しかしこの息子には、経営力は全くなく、しかも傲慢で理不尽。
全て間違った判断の連続で売上が低迷していく一方だった。
このままでは非常にマズい状況……と思いつつも、相手は社長、しばらく様子を見ることにした。
しかしある時、とんでもない経営判断をしてしまう社長……
「利益向上の為、現在、一番外注費用が発生している請負先のA社を切る。そして外注費用の安い請負先を探す」と言い出したのだ。
全員が愕然……A社は確かに外注費用は高いが、それに見合う充分な力を持っている。
しかもA社と連携して売り出している商品は、この会社の売り上げのトップを占めるもの。
安い外注先が同じレベルの品質を維持出来なければ、大きな痛手を負う事になる事は明白。
下手をすれば会社はひっくり返ってしまう。
今まで私は会社のために尽力し全力投球してきた。
役員の立場から、これ以上見て見ぬふりは出来ない。
私はこの方針を真っ向から指摘して社長とぶつかりあった。
すると、社長から猛反感を買うことに。
猛烈なパワハラや、降格、全く違う部署に異動……
その後は、あの手この手の理不尽な理由から退職まで追い込まれた。
「まいったな……この年で無職とは……辛いな……」
昼間の公園、ブランコに乗り、一人茫然としていた。
子供の大学費用、マイホームのローン……どうしよう。
そんなどん底の中、突然、携帯に連絡があった。
それは私が必死になって守ろうとした請負先のA社の社長からだった。
「突然退職なんて、びっくりしたよ。どうしたんだ」
「実は……」とこれまでの経緯全てを打ち明けた。
「そうか、それは大変だったな。だったらウチに来ないか」
え……と驚く私。
「君の元会社、二代目社長はダメだな。あそこは長くないぞ。うちも一方的に契約を解約されたが、こっちから願い下げだね。
売上には多少響くが、最近、更に新商品を開発してな、これが思いの外好評で人手が足りないところだったんだ。
新しい取引先も開拓出来たが、丁度、管理職の人材がいなくてな」と、打診。
「君とは長い付き合いだ……今までの取引で信用もある。どうだ、前の会社と同じ待遇……いや、少し良い条件にしよう」
私は泣きながら、A社の社長の有難い話を受け入れた。
その後、私はA社で大活躍。
みるみる内に主力商品の売り上げは伸び、好調の一途。
この業績を社長は評価してくれて、更に収入は上がった。
そんなある日、携帯に電話が……元会社の社長からだった。
「久しぶりだな。今日は良い話があってな。うちに戻ってくるつもりはないか?」
「どういう事でしょうか?」
冗談じゃない……と内心思ったが、話だけでも聞くことに。
「君が助言したA社の件、契約を戻してほしいんだ。A社と長く信頼を築いてきた君なら、可能だろう?」
どうやらA社の代わりとなる請負先は失敗だったようだ。
まあ、当然だろう。あのまま契約を継続していれば、大きな成長も期待できたのに……
「どうだ、給料も前と同じという訳にはいかないが……それなりの配慮はするつもりだ」
「いえ、結構。私は既に再就職していますので。」
「何、ちょっと待て。それは困る。待遇も良い条件になるよう努力する。とにかく一度、会って話をしようじゃないか」
「あの……私は現在、A社に再就職し、ここで部長職を任されています」
「……な、なに……?」
「現在の私の立場から言わせて頂ければ、あなたの会社と契約する価値はありません」
「な、ふざけるな。こっちは金を出す立場だろう、なんのつもりだ。お前」
「こちらも相手を選ぶ権利はあります。弊社の製品は高い品質と信頼を得て、取り引き先の開拓も順調ですので。信頼出来ない会社と取引するつもりはありません」
「待て、待ってくれ~」と、懇願する声を聞きながら途中で電話を切った。
どうやら、私の予測通り、大事な判断を大きく間違い、会社は窮地に追い込まれたようだ。
後から聞いた話だが、最低な社長についていけないと優秀な技術者や若者は続々と退職。
また私が手掛けていた多数の大口の取引も、それを対応出来る後任人材もおらず、大きく失敗したようだ。
事業で窮地に追い込まれたうえ、更に貴重な人材までも失い……その後、言わずもがな倒産。
全ての原因はあの社長だ。
傲慢な経営者は、優良な会社でも簡単に潰してしまう……なんとも残念な事である。